脱腸(鼠径ヘルニア)の正体と治療法

「お風呂に入った時、足の付け根が膨らんでいるのに気づいた」「立っていると違和感があるが、横になると治まる」。そんな症状、心当たりはありませんか?それはもしかしたら、「鼠径(そけい)ヘルニア」、俗に言う「脱腸」かもしれません。鼠径ヘルニアは、決して珍しい病気ではなく、日本では年間数十万人が手術を受けていると言われています。今回は、この身近な病気について、その正体と、松田病院で行っている治療法について詳しく解説します。

1. 鼠径ヘルニアとは?なぜ起こる?

「鼠径部」とは、足の付け根の部分のことです。

お腹の中には、腸や脂肪などの臓器がありますが、通常は「腹膜」という袋と、その外側にある筋肉や筋膜によって支えられています。しかし、加齢により筋肉が弱くなったり、腹圧(お腹にかかる圧力)がかかる生活(力仕事、便秘、肥満、激しい咳など)を続けたりすることで、鼠径部の筋膜に穴(ヘルニア門)が開いてしまうことがあります。そこから腹膜が飛び出し、さらにその中に腸などが入り込んでしまった状態が、鼠径ヘルニアです。

初期は、立った時や力を入れた時に、足の付け根が「ぷっくり」と膨らみます。指で押したり、横になったりすると、飛び出した臓器がお腹の中に戻り、膨らみは消失します。痛みは伴わないことも多いですが、徐々に違和感や重い感じ、鈍い痛みに変わっていくことがあります。

2. 「戻るから大丈夫」は危険!嵌頓(かんとん)のリスク

「横になれば戻るし、痛くないから」と、放置してしまう方がいらっしゃいます。しかし、鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。それどころか、放置すればするほど、筋膜の穴は広がり、膨らみは大きくなっていきます。

最も恐ろしいのは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる状態です。飛び出した腸が筋膜の穴に挟まり、お腹の中に戻らなくなってしまうのです。嵌頓を起こすと、腸の血流が悪くなり、放置すれば数時間で腸が壊死(細胞が死んでしまうこと)してしまいます。これは、激痛、吐き気、嘔吐などを伴い、命に関わる緊急事態です。嵌頓を起こした場合は、直ちに緊急手術が必要となります。

「戻るから大丈夫」ではなく、「戻るうちに治す」ことが、何よりも重要です。

3. 松田病院での治療:患者様に合わせた、2つの手術法

鼠径ヘルニアを根本的に治す方法は、手術しかありません。手術では、飛び出した腹膜の袋(ヘルニア嚢)を元に戻し、開いてしまった筋膜の穴を、医療用の人工メッシュ(補強材)で塞いで補強します。

松田病院では、患者様の状態、年齢、生活スタイル、ご希望などを総合的に判断し、最適な手術法をご提案しています。主に実施しているのは、以下の2つの術式です。

腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(TAPP法)

お腹に3箇所の小さな穴を開け、カメラ(腹腔鏡)と専用の器具を挿入して、お腹の内側からメッシュをあてる手術です。

  • 特徴: 傷が非常に小さいため、術後の痛みが少なく、回復が早いです。また、両側のヘルニアや、
       再発したヘルニアに対しても、同じ傷からアプローチ可能です。

ヘルニア根治術(クーゲル法など、前方切開法)

鼠径部を数cm(3〜5cm程度)切開し、体の外側からメッシュをあてて補強する手術です。

  • 特徴: 従来から行われている一般的な方法です。全身麻酔だけでなく、腰椎麻酔などでの手術も
       可能な場合があります。ヘルニアの袋が非常に大きい場合や、腹腔鏡手術が難しい場合に
       選択されます。

松田病院では、専門医が正確な診断を行い、それぞれの術式のメリット・デメリットを患者様にわかりやすく説明いたします。

足の付け根の違和感や膨らみは、身体からのサインです。「これくらい大丈夫」と我慢せず、どうぞお気軽にご相談ください。

症状にお悩みの方へ

私たち松田病院は岡山県倉敷市にある、消化器がんを中心に、整形外科・泌尿器科など外科系に強みを持つ専門病院。
大病院に劣らぬ技術と小回りの利く対応で、地域医療を支えています。

松田病院の診療案内はこちら