胆石症はいつ手術が必要?―胆嚢摘出術の適応をわかりやすく解説
胆石(胆石症)は、日本でも非常に多い病気のひとつです。しかし、すべての胆石に対して「すぐ手術が必要」というわけではありません。 では、どのようなケースで手術が勧められるのでしょうか? ここでは、胆石症における『手術が必要となるサイン』を中心に解説します。
手術の基本 ― 胆石の標準治療は「胆嚢摘出術」
胆石症の根本的な治療は、胆嚢(胆汁をためる袋)を取り除く腹腔鏡下胆嚢摘出術です。
腹腔鏡手術はお腹に4か所程度の小さな穴を開けて行う低侵襲手術で、
痛みが少なく、入院期間も短く、早期の社会復帰が可能なことから、世界的にも標準治療となっています。
手術が必要となる「胆石症の4つの代表的な適応」
① 胆石発作(右上腹部の強い痛み)を繰り返す場合

胆石が胆嚢の出口にはまり、急に胆嚢が収縮すると激しい痛みを起こします。
- 差し込むような痛み
- 背中や右肩への放散痛
- 脂っこい食事の後の痛み
これらが繰り返す場合、再発する可能性が高く、手術が推奨されます。
② 急性胆嚢炎を起こした場合
胆石が胆嚢の出口を塞ぐと、胆汁がうっ滞し炎症が起こります。
発熱、右上腹部痛、嘔吐などがみられ、放置すれば重症化します。
急性胆嚢炎は基本的に手術が必要であり、ガイドラインでは三日以内の手術が推奨されています。
③ 総胆管結石を合併した場合
胆嚢の中の石が総胆管へ落ちると、以下を引き起こします:
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 発熱・悪寒
- 肝機能障害
- 胆管炎(重篤になりうる感染症)
まず内視鏡(ERCP)で石を取り除き、その後胆嚢を摘出するのが一般的です。
④ 石の性状や大きさからリスクが高い場合
症状がなくても、以下のケースでは将来的な胆嚢炎・胆管炎・胆嚢がんなどの合併症リスクが高く、手術が推奨されます:
- 3cm以上の大きな胆石
- ポリープ合併(特に10mm以上)
- 陶器様胆嚢(胆嚢壁が石灰化し硬くなる)
- 胆嚢壁の肥厚
- 充満胆石
手術が不要なケースもある?
一方で、以下の場合は経過観察で問題ないことが多いです:
- 偶然見つかったが全く無症状
- 小さく、動かず、炎症を起こしていない
- 胆嚢がしっかり収縮している
とはいえ、症状が出るタイミングは予測できないため、医師と相談しながら定期的にエコー検査などで様子を見ることが重要です。
手術の流れと回復
腹腔鏡下胆嚢摘出術の特徴
- 手術時間:60〜90分程度
- 入院期間:術後3~4日が一般的
- 傷は小さく、術後痛も少なめ
- 食事は術翌日から再開可能
- 1〜2週間で日常生活へ復帰
胆嚢がなくても、肝臓から腸へ直接胆汁が流れるため、普通の生活をおくることができます。
当院での方針
当院では、消化器・肝胆膵の専門医が、
胆石の種類・場所・胆嚢の機能・合併症の有無を総合的に判断し、
「本当に手術が必要か」「今が適切なタイミングか」を丁寧に評価します。
「いつ手術すべきかわからない」
「痛みが時々あるが放置してよいか不安」
など、どんな小さな疑問でもお気軽にご相談ください。